まち全体をデザインするうえでは、もちろん宿だけでなくゲストが地域を回遊して楽しめる要素、たとえば飲食店や文化体験施設、温浴施設といったコンテンツが不可欠です。
「何もない」地域なのにどんどん魅力的な事業者がやってくる福住地区で活動する安達鷹矢さんは自身の会社「株式会社 Local PR Plan」で、NIPPONIA 福住 宿場町を運営する経営者であり、株式会社NOTEの一員として同地区のエリアマネジメントも行なっています。
「集落丸山」や「里山セミナーハウス天空農園」など、NIPPONIAの礎となるプロジェクトに参加した安達さんは、当時ITによる地方創生を志し「楽天」に勤め、地方の事業者向けのECコンサルを担当していたものの、結局利益が東京に集約されているように感じていたそうです。「もっと地方にお金が循環するビジネスモデルはないか」、そんな想いで日々悶々としていた彼はNIPPONIAに参画しました。
「”創造的職人宿場町”というコンセプトで福住をクリエイティブな職人の集まる町にしたいと思っています。自分自身の想いを形にしている人は、誰もが職人的だなと思っていて。なので、福住でいう〝職人〞は 伝統工芸や工業のそれだけではなく、農業、パン屋、アーティスト、シェフ、自然療法、手仕事作家など様々なジャンルで、独自の価値創造をしている事業者のことを指します」
江戸時代に宿場町として栄えた福住の特徴を活かしつつ、新しい魅力をつくるため安達さんが行き着いたのは、まちのコンセプトに合った移住者を呼び込み、エリア全体を計画的に構築することでした。
目標は、地域外から年間1,000人を自力で集客できる店舗を100店舗集めること。つまり、創造的職人町に増やしたいのは外から訪れる人に向けたコンテンツというわけです。その創造的職人たちの生み出した作品たちは、安達さんが経営する「NIPPONIA 福住 宿場町」にも多くが取り入れられています。
とはいえ、外需向けのビジネスとなると単価は上がり、地域の人は利用しにくくなる側面もあります。安達さんは「確実にそうなります」と言いながら、地域の集落の自治会町会から成るまちづくり協議会の中で「移住コーディネーター」として活動したり、ボランティアで長く地域のために活動していた期間が10年以上あります。
「みなさんのお子さんやお孫さんが福住に帰ってきて、働きたいと思える場所を創っているつもりです」と、地域の方々とも密にコミュニケーションをとりながらまち全体の価値の再構築を目指しています。
福住のエリアマネジメントが功を奏しているのには、地元住民に寄り添った立場からの移住者サポートがあります。これが仮に不動産業者だったら、同じようにはいかないかもしれません。
安達さんは、大切なのは「自分の取り組みやビジョンを地域に対してープンにすること」としながらも、「しっかりと深く今やろうとしていることを説明して、地域の方を味方につけておくと、トラブル時には瞬時に解決してくれたりと、本当に心強い」と語ります。
地域の方々も、新しく来た方々も一体となって、歴史的な価値を残し、地域を未来へと繋げる価値を生み出していく。あたらしく、なつかしいNIPPONIAの取り組みが福住ではじまっています。
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